どんな君も、全部好きだから。
沈黙の中、夏海くんと並んで歩きながらどう切り出そうか迷っていた。

緊張のあまり口の中がカラカラになってしまっている。

心も頭の中もぐちゃぐちゃだったけど、何よりもまず私がしなきゃいけないことはわかっていた。

夏海くんに失礼な態度をとってしまったことを謝らなきゃ。


「な、夏海くん」


私は震える声で夏海くんを呼んだ。

夏海くんは私の方を見てくれたけど、その表情はまだどこか不安そうだった。

私は震える唇にぎゅっと力を入れて、必死で声を押し出した。


「ご、ごめんなさい。失礼な態度をとってしまって・・・本当にごめんなさい」


謝りながら頭を下げるのと同時に、自分の不甲斐なさにこみ上げてきた涙をグッとこらえた。

私が今泣くことは違うと思うから。


「・・・理由、聞いてもいい？早坂の悩みって俺が関係してるんじゃない？」


そう言った夏海くんの声はとても優しくて。

顔をあげると私を見下ろす温かい瞳と目が合って。

私はそれ以上涙を抑えることができなくなってしまった。

こんなふうに泣いたら夏海くんに気を遣わせてしまうのに。


「ご、ごめんなさっ・・・私・・・勝手にモヤモヤしちゃって・・・」

「うん、何にモヤモヤしたの？俺、何か早坂がイヤなことしちゃった？」


夏海くんは私の頬を伝う涙をぬぐいながら、優しくゆっくりと話しかけてくれた。
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