どんな君も、全部好きだから。
「・・・わたし、夏海くんのこと、中途半端なままでごめんね・・・」


気持ちをもらうばかりで、自分は何も返せていないことがとても申し訳なく思えた。


「俺がまた告白するときに返事くれればいいんだって。中途半端とか考えなくていーよ」

「で、でも・・・・・・私が嫌なの・・・」

「何がイヤ?」


夏海くんが私から身体を離して視線を合わせてくる。

こんな温かい表情や優しい声を、他の人も知っていたら・・・嫌だな。

でもいちばん嫌なのは、今の自分にそんなことを思う資格がないということ。

自分の中に確かにある独占欲に気づくと同時に、それを言葉にできる立場にないことがとてももどかしく感じた。


「優依?どーした?」


優しく私を覗き込む夏海くんに、胸が高鳴る。

この気持ちが恋だったらいいな。

そしたら独り占めしたいって言えるのに。

そんなことを考えてしまうくらい、夏海くんは私にとって特別な存在になっていた。


それと同時に、自分の中の臆病な気持ちを更に自覚してしまう。

好きだって、彼女になりたいって、私なんかが思ってもいいの?

こんなに自信がない今の私のままで、夏海くんの隣に立つ権利をもらってしまっていいの?
< 110 / 246 >

この作品をシェア

pagetop