どんな君も、全部好きだから。
席に座ってから教室をこっそり見渡してみるけど、夏海くんはまだ来ていなかった。

髪をおろしてるの見たら何て思うかな?

映画を観に行った日みたいにまた『可愛い』って思ってくれたりして・・・?

そんなことを考えてしまう自分があまりに恥ずかしくて、思わず机の上に置いたままのスクールバッグに顔を突っ伏した。


「賢斗おはよ~」

「夏海うーっす」


みんなの声で夏海くんが教室に入ってきたんだとわかって心臓がドキンと跳ねる。


「はよ」


短くそう応えた夏海くんの声は少し眠そうで、姿を見ていないのに顔を思い浮かべるだけできゅんとしてしまった。


いつ私の髪型に気づくかな?

席が離れてるからなかなか気づかないかも。

ていうか私、昨日夏海くんに抱きしめられたんだよね。

しかも2回も。

手も握られたし、『優依』っていっぱい呼ばれた・・・。


いろいろ思い出してくると再び恥ずかしさがこみ上げてきて、私はますます突っ伏した顔を上げられなくなってしまった。

結局夏海くんの顔を見られないまま朝のHRの時間が来てしまった。


「連絡事項は以上だな。あ、そろそろ席替えもするか。委員長、二時間目終わった休み時間にでもやっといて」


担任の樫井先生の言葉に、教室内が歓喜の声に包まれる。

二年生になって初めての席替え、ドキドキするなぁ。

今までは仲が良い人としか上手く話せないから、そうじゃない人には最初から壁を作ってしまいがちだったけど。

できればそんな自分も徐々に変えていきたい。

今度席が近くなった人とは、せめて普通に話せるように頑張ってみよう。
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