どんな君も、全部好きだから。
「あ、やべ、移動忘れてた」


慌てて移動の準備をする西村くんを待たずに、夏海くんはさっさと教室を出て行ってしまった。


「あいつ、誘ったくせに待ってくんないってどーゆーこと?」


次の授業の教科書を机の中から引っ張り出しながら、西村くんは腑に落ちないという感じでぼやいた。


「あんたがグズグズしてるからじゃん?早く行きな~」


西村くんと神崎さんのやり取りを見ながら、私はさっきの夏海くんのことが気にかかっていた。

ちょっと機嫌が悪かった・・・?

教室では何事にもドライな雰囲気だから、いつもと同じだと言われればそうなのかなって思うけど。

でもなんとなく、夏海くんからピリッとした空気を感じたような気がする。


そういえば夏海くん、髪型見てくれたかな・・・。

教室で話しかけないようにしてくれてるから何も言われないのは当たり前なんだけど。

わかっているのに、私は気持ちがしょんぼりするのを止められなかった。
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