どんな君も、全部好きだから。
その後も夏海くんとは話ができるわけでもなく、あっというまにお昼休みの時間になった。


いつものように友達とお弁当を食べる準備をしていたら、飲み物がもうなくなっていることに気づいた。


「飲み物なくなっちゃったから買ってくるね。先に食べてて」

「りょうか~い」


私は二人を残して一階にある自動販売機へ向かった。


窓にうっすら映る自分の姿を横目で見ていると気分は更に落ち込むようだった。

自信を持った人間になりたいと決意したのに、早くも後ろ向きな自分が顔を出してきている。

変わるってすごく難しいんだな・・・。

常に卑屈な自分と戦っていなきゃならないんだね・・・。


「優依」


ぼーっと階段を下りていると、ふいに聞こえた優しい呼びかけに胸がドキンと鳴る。

振り向くと夏海くんが小走りで私に近づいてきていた。


「俺も飲み物買いにいく」


スッと私の隣に並ぶ夏海くんは「席めっちゃ近くなったな」と嬉しそうに話し始めた。

この距離感が嬉しくて、私は顔がだらしなく緩んでしまうのを必死で抑えていた。


「今日、髪おろしてる」


夏海くんが私の方を見ながらポツリとそう言った。


「う、うん。ちょっと・・・変えてみたの」


夏海くんがどう思ってるか気になりすぎて、私はなんとなく誤魔化すように肩にかかる髪をくしゃっと握りながら答えた。
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