どんな君も、全部好きだから。
ほっとして思わず夏海くんの顔を見上げたその瞬間。

私の心臓がドクンと大きな音を立てた。

私とクラスのみんなのやり取りを見ていた夏海くんから・・・重いオーラを感じたから。

何度か夏海くんから感じたことのあるピリッとした空気。

ど、どうしたんだろう。

何か気に障ることでもあった?


私の視線に気づいた夏海くんは、すぐに二人のときに見せてくれる柔らかい笑顔をこちらに向けた。


「っ・・・!」


途端に、周りの女子から声にならない悲鳴が漏れる。

クラスのみんなの前でこんな顔を見せてくれるのは初めてで、私も一瞬ドキッとしたけど。

でも、違和感の方が大きくて心がざわついてくる。

どうして急にこんなにハッキリした態度を示すようになったんだろう。

昨日までとは状況が一変しすぎてて、ちょっと気持ちが追い付かない。


「夏海くんっ・・・!」


夏海くんが自分の席へと歩き始めたので、私は思わず呼び止めてしまった。

振り向いた夏海くんは穏やかな笑みを浮かべていたけど、私は何も言葉にすることができなかった。

これ以上踏み込ませないようなオーラを、その笑みの奥に感じたから。

感情の見えない瞳は『何も聞くな』って私を牽制しているような気がする。


夏海くんは今、何を思っているの・・・?


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