どんな君も、全部好きだから。
キープって、なに・・・?

返事を保留にして、曖昧な態度をとって弄んでる、みたいなこと・・・?


「そ、そんなんじゃ――――」


私は慌てて否定の声をあげたけど、すぐに言葉を吞み込んでしまった。

夏海くんから『今度告白するときに返事をくれればいい』と言われているにしても、付き合う決心もつかないまま曖昧な態度で接していることに間違いはないと思ってしまったから。


「もしかしたら賢斗のことフるかもしれないんでしょ?もったいぶって返事先延ばしにしてるの・・・賢斗がかわいそうだよ」


泣きそうな顔でそう訴えてくる神崎さんを見て、私の心臓が掴まれたかのようにきしんだ。

彼女が心の底から夏海くんを想って心配しているのが伝わってきたから。


好きだと自信をもって言えない私は、夏海くんの隣に堂々と立つために変わろうとしていて。

でもその自信はいつになったら確かなものになるの?

そんな自信がいつになってもつかなければ、神崎さんの言うように夏海くんにお断りをするしかない。

そうしたら、夏海くんが返事を待ってくれている今のこの時間は全部無駄になってしまう。


「部外者の私がこんなこと言う権利ないのわかってるけど、今すぐ付き合う決断ができないならすぐにでも断るべきだと思う」


神崎さんはそう言うと、「先に教室戻るね」と言って足早に去って行った。
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