どんな君も、全部好きだから。
その時。

焦っている俺の背後から「あの・・・」という控えめな声がかけられてビクッとしてしまう。

そろりと振り向くと、面識のない女子が両手に本を抱えたまま俺の方を見ていた。

腕章をしているから図書委員だろう。

髪を低めの位置で一つに結んだ、いかにも真面目そうな女子だった。

俺の外見だけが好きな派手な女子も苦手だけど、真面目な女子も苦手だった。

不真面目な印象をもたれている俺は、こういう真面目な女子からは毛嫌いされてきたから。

本を乱暴に扱っていると思われて注意をされるのかもしれない。


外見で判断されることにうんざりしていたくせに、自分だって見た目や雰囲気で他人をひとくくりにして勝手に苦手意識をもつアホなやつだった。


そして俺の予想とは裏腹に、その図書委員が俺を責めることはなかった。

責めるどころか、棚の中がぎゅうぎゅうになっていたんじゃないかと謝ってきて。

更には一緒に本を片づけたことに対してお礼まで言ってきた。

本を落とした俺が片づけるのは当たり前のことなのに、なんでそっちが『ありがとう』を言うんだ?
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