どんな君も、全部好きだから。
この子は俺がどういう人間なのか見た目で判断していないように感じる。

そう思った矢先、どの本を取ろうとしていたのか聞かれて「ゆっくり読んでいってくださいね」と声をかけられた。


俺みたいな派手なヤツが図書室にいることに疑問を感じたりしないんだろうか。

無性に気になった俺は思わず「俺みたいなのが本読みにきたとか、変じゃない?」なんて唐突な質問をしていた。

でも言ったそばから後悔した。

初めて会った人にする質問じゃないし、そもそもそんなこと聞かれても知らねぇよって感じだろうし。


図書委員の女子は少し目を大きくして俺の方をじっと見ていたけど、すぐに考え込む表情になった。

質問を撤回しようと思ったけど、どんな返答がくるのか純粋に気になった俺は無言で彼女の言葉を待った。

彼女はほんの数秒考えた後、


「変だとは思わないです。本読むの楽しいですよね」


と真顔でさらりと言った。

俺を喜ばそうとしたり、俺に気に入られようとしているわけでもなく。

無理して好意的な言い方をしているようにも感じない。

その裏に何の他意も含んでいない、シンプルな返答。


ほんとうにそうなのかどうかは正直わからないけど、少なくとも俺にはそう感じられた。

彼女の言葉は胸にスッと入ってきて、温かみを帯びながらじわじわと広がっていった。

そして、『誰が本を読みにきても変なことじゃない』という当たり前のことを言ってもらえたことが単純に嬉しかった。
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