どんな君も、全部好きだから。
チャイムに負けちゃだめだって私!

言葉の続きを声に出そうとしたとき、ふいに夏海くんがすぐ目の前まで距離を詰めてきて、


「今日、何?」


私の顔を覗き込みながら真剣な、だけど少し不安も帯びているような瞳でそう言った。

私の好きな夏海くんの仕草に体温の上昇が止まらない。


「き、今日・・・話したいことがあるので、い、一緒に帰ってくれませんか・・・?」


今までなら恥ずかしくてすぐに目を逸らしてしまっていたけど、私は夏海くんの瞳を見続けた。

きっと私の顔はいつも以上に真っ赤になっていたと思う。

でもそんなことを気にする余裕もないほど、夏海くんの反応だけに神経を集中させていた。


「・・・俺も話したいことあるから、いーよ、一緒にかえろ」


夏海くんは私の顔をじっと見つめながら少しゆっくりした速度でそう言った。

そしてほんのわずかに口角を上げた後、背を向けて歩き出した。

夏海くん、少しだけど笑ってくれた。

それだけで嬉しくて泣きそうになってくる。


膝が震えていることに気づいたのは、夏海くんの背中が見えなくなってからだった。

一生分の勇気を出し切ってしまったような脱力感に自分でも呆然とする。

赤く火照った顔も、うるさく響く心臓の音も、しばらくはおさまりそうになかった。


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