どんな君も、全部好きだから。
ただ私を見つめるだけで何も答えない夏海くんは、返答に困っているかもしれない。

夏海くんが困るかもしれないってわかっていながら話し続けるなんて、自分勝手だと思う。

中途半端にして結局断ったくせに、後になってやっと気づいた気持ちをこんなふうに一方的に話すなんて。


「こんなこと・・・今更言われても困ると思うんだけど、どうしても伝えたくて・・・。ごっごめんなさい、自分勝手に夏海くんを振り回して―――」


そう言いながら今にも涙がこぼれ落ちそうになった瞬間、私を見つめる夏海くんの瞳が揺らいだような気がして。

気づいたら私は今まででいちばんきつく、夏海くんに抱きしめられていた。


「・・・俺は振り回されてないし、優依は自分勝手なんかじゃないよ」


夏海くんが私の名前を口にしたときの優しい声音が嬉しくて、ますます涙が溢れてくる。

もう二度とこんなふうに呼んでもらえないかもって、考えたりもしたから・・・。


「俺の彼女になりたいと思ってくれてるって・・・そう受け取っていいの?」


夏海くんは腕を少し緩めて私の身体をふわっと抱きなおすと、顔を覗き込んでそう言った。

コクリと頷いた私はそっと夏海くんを見上げて、


「もしまだ間に合うなら、私と付き合ってください」


と改めて気持ちを口にした。
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