どんな君も、全部好きだから。
彼の少し色素の薄い瞳が今は私しか映していないことがたまらなく嬉しくて。

この距離感を独占することが許されるなら、この先どんなことでも乗り越えていける気がした。


私の言葉を聞いた夏海くんが、頬を赤く染めたように見えた。

でもそれはすぐに戸惑うような、不安そうな表情にかき消された。


「俺・・・今まで優依に何回も怖い思いさせたり、心配かけてたことも知って・・・ごめんって謝りたかった。こんなダメな俺はフラれて当然だし、もう諦めようって思ってたんだけど・・・でもどうしてもできなくて」


苦し気に眉を寄せた夏海くんは私の背中に回していた腕を離し、私の溢れた涙を指でそっとぬぐった。


「・・・ほんとに俺でいいの・・・?」


震えそうなほどか細く発せられたその声から彼の不安な気持ちが伝わってくる。

こんな顔をさせていることを少し前までは嘆くだけだったけど、自分のほんとうの気持ちに気づいたからもう目をそらさない。

彼が不安なときは少しでも安心してもらえるように私が頑張りたい。
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