どんな君も、全部好きだから。
『好きになったら名前で呼んでね』と言われたことを思い出した。

あれは夏海くんが初めて私の名前を呼んでくれたとき。


ほんとうに好きになって、しかもお付き合いすることになるなんて。

あの時はまさかこんな未来が来るなんて全然想像もできていなかった。



「賢斗、くん」



私は夏海くんから目を逸らさずに、名前を呼んだ。


男の子を下の名前で呼ぶなんて初めてで、声に出した途端恥ずかしさがこみ上げてきた。

顔が赤くなるのを感じたけど、隠す前に夏海くんに抱き寄せられた。


「・・・めっちゃ嬉しい」


夏海くんの噛みしめるような声色に胸がきゅうっと締め付けられる。

私がすること何もかも、どんな些細なことでもこんなに喜んでくれる人なんてきっと夏海くんしかいないよ。


夏海くんから気持ちをもらうばかりで自分が返せているか心配だったけど・・・。

こうやって喜んでもらえることで、少しずつ不安が安心に変わっていく。


そんな日々の積み重なりが、私の自信に繋がっていくのかもしれない。


夏海くんの腕の中にすっぽり包まれながら、身体中にじわじわと広がっていく幸せを感じていた。


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