どんな君も、全部好きだから。
私の言葉を静かに聞いていた夏海くんは少しのあいだ無言で何かを考えている感じだった。

でも次に夏海くんの口から出たセリフに、私は耳を疑った。


「じゃ、俺ともっと仲良くなってから、もっかい判断してもらえない?」


・・・えっ?いま何て?


「早坂に近い存在になりたいし、俺のこともっと知ってもらいたい。そんでもう一回告白させて。返事はそんときにくれない?」


返事は・・・さっきしたのですが・・・?

あの『ごめんなさい』は無効っていうことですか・・・?


「あの、でも、私・・・」

「あっ、俺のこと生理的に無理とかはない?」

「えっ?!そ、それは、もちろんないけど・・・」

「今さらだけど、付き合ってるヤツは?」

「い、いないです・・・」

「良かった。じゃ、好きになってもらえるよーに頑張るわ」


そうサラっと言ってのける夏海くんは、教室では見たこともない優しい顔で私を見つめている。

が、頑張るって、いったい何をどう頑張るというの?

こんな地味で面白味もない私と仲良くしたって何もメリットないと思うんだけど?

他に可愛い女子がたくさん、ほんとうにたくさんいるのになぜ私に・・・?

疑問は次から次へと湧いてきた。


でも目の前で見る夏海くんの笑顔はあまりに眩しくて。

そしてとても心臓に悪すぎて、私はもう何も言葉を紡ぐことができなくなってしまった。



こうして、私と夏海くんの世界が突然交わり始めたのだった。



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