どんな君も、全部好きだから。
「それで、返却された本はここに置かれてるから、当番の日はこれを棚に戻します」

「オッケー」

図書室に到着してから、夏海くんは真剣な顔で私の説明を聞いてくれていた。


「いろいろお仕事あるからけっこう時間遅くなっちゃうんだけど、放課後大丈夫?」

「全然だいじょーぶ。めっちゃ頑張るわ」

「ふふっ」


無表情に見えるのにやる気が溢れているのもちゃんと感じられるのがなんだか面白くて、私は思わず小さく笑ってしまった。


「・・・なに笑ってんの?」

「!!」


突然夏海くんが腰をかがめて私に顔を近づけてきたので、声にならない悲鳴が出る。

ひっ、ひぃいいいいぃ・・・綺麗なお顔がこんな近くに・・・!


「う、ううん、なんでもないよ」


私は必死で顔をそらして夏海くんを視界から外した。

身長差があるからまだ二人きりでも話ができてたけど、顔を近づけられたらもう無理だよ・・・。


「俺が委員の仕事やる気なの、変でしょ?」


慌てふためいている私にふいにそう問いかけてきた夏海くん。

夏海くんの方を見ると、なんだか感情の見えない表情をしている。


私は初めて夏海くんと言葉を交わした日のことを思い出してしまった。

あの時も、自分のことを変じゃないか尋ねてきた夏海くん。
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