どんな君も、全部好きだから。
先輩の考えがわからなくてなんとなくその後ろ姿から目が離せないでいたら、


「今のだれ?」


と夏海くんの低い声が聞こえてきた。

あまりに黒いオーラをまとった声だったので、私は思わずビクッとなってしまう。


「去年一緒に図書委員だった先輩で・・・」

「三年?」

「うん。宮田先輩」

「・・・・・・」


夏海くん、どうしたんだろう・・・。


夏海くんのピリッとした空気が気になったけど、すぐに予鈴が鳴ったので私たちは図書室を後にした。


教室に戻ったときには夏海くんはすっかりいつも通りに戻っていた。

でも私はさっきの重苦しい雰囲気が心に引っかかったままで、しばらく忘れられないでいた。


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