どんな君も、全部好きだから。
服装がおしゃれなのは言うまでもないんだけど、学校では無造作ヘアな感じなのに、今日は前髪をセンターでラフに分けている夏海くん。

いつもは柔らかい前髪に少し隠れぎみな形の良い目が、今日はガッツリ見えてしまっていて。

むき出しになった目元や、おでこから鼻筋にかけての整った造詣はとてもじゃないけど直視できなくて、私は夏海くんと目を合わせることができないでいた。

そんな私の気持ちを知ってか知らずか、じーっと私の様子を見ている夏海くん。

早くわからない問題教えろって感じですよね・・・でも・・・そんなに見られると本当に無理です・・・。


「早坂、顔真っ赤」


突然私の方に身を乗り出してきた夏海くんが、すぐ近くで頬杖をついてじっと私を見つめ始める。

ひっひええーーーーーっ!!

ここが図書館じゃなかったら大きな悲鳴をあげてしまっていたかもしれないと思うほど、私の心臓は大きく高鳴った。


「みっ・・・見ないで・・・お願い・・・」


もはや蚊の鳴くような情けない声しか出せない私は、両手で顔を覆いながらできる限り夏海くんから上半身を離した。


「そんな可愛いことしても、耳まで真っ赤なの見えてる」


かっかわっ・・・?!

そんなこと男の子に言われたのは生まれて初めてで、どうしていいかわからなくなる。

というか私が可愛いわけないので、夏海くんの感性がきっと変わってるんだ。


「もうじっと見ないから、勉強おしえて」


優しい声でお願いされて、私は顔を覆っていた手をおろし、そっと夏海くんの方を見る。

顔の熱が全然引かないゆでタコみたいな私を見て、夏海くんはなぜか満足そうに笑った。

はぁ・・・。図書館なら緊張もましかなと思って提案したのに、全然大丈夫じゃなかったな・・・。
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