どんな君も、全部好きだから。

夏海くんの嫉妬

中間テストも無事に終わり、部活や委員会が再開した5月半ば。

今日は夏海くんと委員のお仕事をしていた。


「俺、今回のテストめっちゃ手ごたえあるかも」


本を棚に戻しながら夏海くんが言った。


「本当?すごいね」

「早坂に教えてもらったから、そのあと自分でもめっちゃ頑張った」


私が勉強教えたのは一日だけだったけど、それからも頑張ってくれたんだ。

自分のしたことが良い結果につながるのはすごく嬉しい。


「テストの結果良かったら、ほめてね」


夏海くんはニッと笑って、おどけた感じで言った。


「ほ、ほめるだなんて、私はそんな立場じゃないっていうか、おこがましいというか・・・」

「早坂にほめてもらえたら次も頑張れそーなんだけど」


えぇぇぇ・・・そんなふうに言われたら断れなくなっちゃうよ・・・。


「じ、じゃあ・・・私なんかでよければ・・・」

「やった」


ふっと笑った夏海くんが本当に嬉しそうで、私はなんだか照れくさくなって下を向いた。


「俺あっち片づけてくるわ」


そう言って離れていく夏海くんの後ろ姿から、なぜか目が離せない。


私の中で夏海くんの存在が大きくなっているのは間違いないけど、これが恋なのかどうか・・・まだわからないでいる。

夏海くんのことを『人として好き』だと思ってるのは確か。

好きだと言われたのも、優しく接してもらっているのも、本当に嬉しい。


だけどもし、夏海くんじゃない他の男の子にも優しくされたら、私はどんなふうに思うんだろうか。

仮にこれが恋だとして、優しくされたから好きになるって・・・単純すぎない?

恋ってそんな単純なものなの?
< 66 / 246 >

この作品をシェア

pagetop