どんな君も、全部好きだから。
「あ、早坂さん」


私を呼ぶ、聞き覚えのある声。

あまりに自分の思考に入ってしまっていたので、私は思わずビクッと肩を震わせてしまった。

声のした方を見ると、去年同じ時期に図書委員をしていた宮田大輝先輩が立っていた。


「こ、こんにちは」

「委員お疲れ様。そういえば水曜に当番だったって言ってたね」

「はい。先輩は・・・本を借りに?」


宮田先輩の手にある二冊の本を見ながら言った。


「うん。受験勉強の息抜きにと思って」

「そうなんですね。勉強お疲れ様です」


宮田先輩、そういえばテストは学年で10番には入ってるすごい人だって、去年噂で聞いたことがある。

知的で物腰の柔らかいところが、女子に人気があるみたいだった。

去年の図書委員会のときにも、先輩が女の子に囲まれていたのを覚えている。


「早坂さんは本読むの好きそうだよね」

「えっ?あ、はい、好きです、本読むの」


突然自分のことを言われて、私は驚きのあまりしどろもどろになってしまう。


「良かったらおすすめの本教えてくれない?勉強の合間に読む本」

「わっ私のおすすめ・・・ですか・・・?」

「うん。なんでもいいよ。自分では選ばないようなのもたまには読みたいし」


思いもよらないことを言われて私は困ってしまう。

よく知らない人間のおすすめの本なんて、本当に読んでみたいのかな・・・。

でも図書委員として学生のみんなにおすすめ本を紹介する活動もあるので、これも委員の仕事になるのかな?

そう思い直した私は以前読んで面白かった本を数冊、先輩にすすめた。
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