どんな君も、全部好きだから。
「今日はこれ借りていくよ、ありがとう」

「いえ、先輩の好きなジャンルじゃなかったらすみません」

「ううん、俺なんでも読むから大丈夫だよ。読み終わったら感想聞いてね」

「え、はい、えっと、お待ち・・・してます・・・?」


感想はくれてもくれなくてもどちらでもよかったけれど、なんだか先輩のペースに乗せられてつい返事をしてしまっていた。


「そういえば同じ当番の人は今日いないの?えっと・・・夏海くん、だったっけ」


先輩は図書室の中を軽く見渡して、夏海くんのことを聞いてきた。


「いえ、います。たぶん奥の方を片づけてくれていると思います」

「へぇ、ちゃんと委員やるんだ?」


その一言が、まるで夏海くんが委員をやることが意外だとでも言うような口ぶりに感じて、私は少し胸がザワっとした。

夏海くんのことをよく知らない人は、そんな印象をもってしまうのかな・・・。

夏海くんはいつもお仕事もきっちりやってくれているのに。


「夏海くんは休んだこともないし、いつも真面目に取り組んでくれてます」


なんだか夏海くんのことを悪く言われたような気がして、それが悔しくて。

私は真っ直ぐに先輩を見ながらはっきりと言った。

先輩は一瞬目を丸くしたけど、すぐに申し訳なさそうな表情で


「ごめん、彼が不真面目だって決めつけた言い方をしたね」


と謝ってくれたので、私はハッと我に返った。


「あ、すみません、私・・・」


先輩だって知らないからそう言ってしまっただけなのかもしれない。

それなのにいきなり強く言い返すなんて・・・人に対してこんな言い方をしてしまったのは初めてだ。
< 68 / 246 >

この作品をシェア

pagetop