どんな君も、全部好きだから。
「ううん、気にしないで。俺もほんとごめんね。ほら、ペアの人がちゃんと委員の仕事しなくて困るってことよくあるからさ。早坂さんのことちょっと心配してたんだよね」


先輩は申し訳なさそうな顔をしながらも、穏やかな雰囲気で私を見ながら言った。

先輩、私のこと心配してくれてたの・・・?

それなのに私ったら、ちょっと怒った感じで言ってしまって・・・本当にダメだな・・・。


「あ、ありがとうございます」


私はペコリと頭を下げてお礼を言った。


「何か困ったことあったら、よかったらなんでも話してね」


先輩にそう言われて、私は思わず戸惑ってしまう。

なんでこんなに私のこと気にかけてくれるんだろう?

私の記憶では、先輩とは委員のときに数回、しかも事務的なお話ししかしたことなかったと思うんだけどな。


「早坂」


頭の中がハテナマークでいっぱいになっている中、背後から聞こえた夏海くんの声にドキッとする。

それが以前聞いた、黒いオーラをまとった低い声だったから。


「仕事の邪魔してごめんね。また本の感想言いに来るよ」


夏海くんが来たのと同時に、先輩は颯爽と去って行った。


「・・・本の感想ってなに?」


夏海くんの声はまだ怖いままで、私は心臓がドクンと跳ねるのを感じた。


「あの・・・さっき先輩におすすめの本を聞かれて、私のすすめた本を借りてくれたんだけど、読んだら感想聞いてほしいって言われて・・・」

「あの三年と仲良いの?」

「な、仲良くはないよ?去年同じ図書委員だったときも、ほとんど話したことがなかったから・・・」


夏海くんに他の男子と仲が良いと思われるのはなぜかすごく嫌だったので、私は慌てて否定した。
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