どんな君も、全部好きだから。
夏海くんはしばらく何かを考えているみたいだったけど、私に視線を戻した途端少しだけ目を大きくして、いつもの雰囲気に戻った。


「ごめん、俺こわかった?」

「あ、えと・・・・・・ちょっとだけ・・・」


私の素直な答えを聞いて、夏海くんが少し長めのため息を吐き出す。


「ほんとごめんな。・・・ただの嫉妬だから」

「・・・嫉妬?」


言葉の意味はわかるけど、夏海くんの意図していることがわからなくて私はポカンとしてしまう。


「俺より仲良い男がいたらヤだなって。ていうか早坂が他の男と話してるだけでイヤだし」


困ったような、照れているような、怒っているような、拗ねてるような。

そんな複雑な表情の夏海くんを見ながら、私は言葉の意味をゆっくりと理解した。

私が先輩と話しているのを見て、や・・・やきもち、焼いたっていうこと・・・?


「他の男と喋るなとかさすがに言わねぇけど・・・早坂がいちばんよく喋る男は俺がいい」


背中を丸めて私と視線を合わせた夏海くんがすがるような瞳でそう言ったので、私の胸はまるで掴まれたかのようにきゅうっと締まった。

私が無言でコクコクとうなずくと、夏海くんは安心したように笑って姿勢を戻す。

こんなこと言われたら、また顔が赤くなってしまうよ。


「あと何やることあるっけ?」

「あ、えっと他には――――」



そうして委員の仕事に戻った後も、私はしばらく顔の火照りがおさまらなかった。

私、夏海くんが嫉妬してくれたことを嬉しいと感じてる・・・?


そんな自分の気持ちに気づいて、胸の中はざわつく一方だった。
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