どんな君も、全部好きだから。
「あの、須川さんに、少し聞いてもらいたいことがあるんだけど・・・」

「あ、良かったら"りぃ"って呼んでください!みんなそう呼ぶので」


りぃさんは明るく笑ってそう言った。

な、なんてコミュニケーション能力の高い人・・・!


「じ、じゃありぃちゃんて呼ばせてもらうね」

「はい!私も優依先輩って呼ばせてください」


お互いの呼び方が決定したところで、私は夏海くんと日曜日に遊ぶこと、夏海くんの優しさに何が返せるかわからないでいること、夏海くんが喜ぶことは何なのかを相談した。

そして、まだ好きかどうかもわからないのにそんなことをしていいのか悩んでいることも打ち明けた。


「私なんかが夏海くんを喜ばせるなんてハードル高いと思うんだけど・・・」

「いやいやいや何言ってるんですかあの人喜ばすことできるのは優依先輩だけですよ?むしろ何もしなくても当日待ち合わせ場所に行くだけで死ぬほど喜ぶと思いますけど?ていうか先輩どんだけ誠実なんですか?!」


早口でまくし立てるりぃちゃんの勢いに押されて、私は少し上半身を後ろに引く。


「わ、私こんなんだし、会話も面白くできないし、わざわざ休みの日に時間を割いてもらうのも申し訳ないっていうか・・・。だからせめて、少しでも何か喜んでもらえることができたらなって・・・」

「う~ん、なるほど・・・?」


りぃさんは納得したようなやっぱりわからないような複雑な顔でしばらく私を見ていたけど、突然何かに気づいたように『あっ!』と声をあげた。


「遊ぶの日曜ですよね?先輩、土曜日空いてないですか?」

「あ、空いてる、けど?」

「けんちゃんが喜ぶもの思いつきました!準備したいので土曜日私に付き合ってくれませんか?」


少し興奮した様子で私の肩をガシッと掴みながら迫ってくるりぃちゃん。

私は藁にもすがる気持ちだったので即了承し、その日はりぃちゃんと連絡先を交換して別れたのだった。
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