どんな君も、全部好きだから。
駅前に近づくと、まだ距離があるのに夏海くんがもう来ているのが見えて私は思わず固まってしまう。


図書館のときも思ったけど、夏海くんだけキラキラの空気に覆われてない・・・?

モスグリーンのTシャツがよくお似合の、眩しいあの人のところへ今から行けというのですか・・・?


夏海くんに見入ってしばらくフリーズしていた私だけど、よく見ると周りにいる女性たちがチラチラと夏海くんを見たり、何かコソコソと話したりしていることに気づいた。

りぃちゃんが夏海くんのことを『あの外見ならではの嫌なこともいろいろあるみたい』と言っていたのを思い出す。

知らない人にチラチラ見られたり、自分の聞こえないところで何か話されたりしているのは、居心地悪かったりするのかな。

私だったら周りが気になりすぎて、その場に居続けることが耐えられないかもしれない。


私は早く夏海くんをあの場から解放したくてたまらなくなって、思わず小走りで近づいて行った。


「夏海くん!」


呼びかけに気づいた夏海くんは私を見るなり目を見開いてしまい、何も言葉を発しない。

や、やっぱり、この格好変だったかな・・・?

夏海くんはしばらく無言だったけど、私から一度目をそらして眉間にしわをよせてしまう。

せっかくりぃちゃんが協力してくれたけど、これは夏海くんが喜ぶことではないのでは・・・?!
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