どんな君も、全部好きだから。
そう思った矢先、


「なんでそんな・・・めっちゃ可愛いカッコしてんの・・・?」


という夏海くんの言葉に耳を疑う。

夏海くんは頬を赤くして、なんだか困ったような顔で私を見下ろしていた。


「図書館のときと全然違うじゃん。なんで今日はそんな可愛くしてきたの?」

「え、えっと・・・な、夏海くんに、喜んでほしくて・・・?」


なんと言えばいいかわからない私は本当のことをそのまま答えたけど、私自身これが夏海くんが喜ぶことだとは思えていないので、自分の言葉に疑問を感じてしまう。

夏海くんは赤い顔をしたまま口元を手で覆って、


「・・・何それ。マジで可愛すぎるんだけど」


と少しかすれた声で言ったので、私はいっきにブワッと体温が上昇してしまう。

そんなに何度も『可愛い』って言葉使わないでほしい・・・心臓がいくつあってもたりないから・・・。


「俺のために可愛くしてきてくれたってことでしょ?・・・嬉しすぎてヤバい」


わ、わぁぁ、りぃちゃん大丈夫だったよ!

夏海くん喜んでくれてるみたい!

さすが幼馴染だなぁと感心しながら、私はりぃちゃんに心の中で感謝の気持ちを飛ばしまくった。


それから3駅分電車に揺られてモールに到着した私たち。

映画は14時半からだったので着いてすぐにお昼ご飯を食べたんだけど。

男の子と二人きりで食事なんて初めてだったし、夏海くんがじっと私を見てきたりするから緊張のあまりまったく味がわからなかった。

でも今日の格好のおかげで少しはマシに見えるせいか、夏海くんの隣に立つことや会話をすることに対する抵抗感が少し薄れている気がする。

私、いつもよりたくさん話せてるし、たくさん笑えてるかも。
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