どんな君も、全部好きだから。
「観る映画勝手に決めてごめんな。このシリーズ好きでさ」


映画のチケットとドリンクを買い終わってから入場時間を待っていたら、夏海くんがそう言った。


「今日は夏海くんがしたいことしてほしいから、決めてくれて良かったの」


ゆるく首を振りながらそう言うと夏海くんは嬉しそうに笑ってくれたけど、すぐに何か考え始めた。


「今日俺、したいことしていいの?」


改めて聞かれるとなぜかドキッとしてしまうけど、前の図書館は私の希望を聞いてもらったので、今日は夏海くんがやりたいことを決めてほしい。

私がコクリとうなずくと、夏海くんは『マジか・・・』と呟いて無言になってしまった。

どうしたんだろう?私、なにか変なことでも言ってしまったのかな。


夏海くん、今日したいことできてるかな・・・?

少しでも楽しいと思ってもらえてるかな・・・?

こんなふうに考え込む夏海くんを目にすると、途端に不安が押し寄せてくる。


夏海くんにどうしたのか聞いてみようと口を開いた瞬間、私たちが観る映画の入場開始の放送が館内に響き渡った。


「お、もう入れるって。行く?」

「あ、うん、そうだね」


夏海くんのことが気になりつつも、私はチケットとドリンクを手に入場ゲートへと向かっていった。


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