どんな君も、全部好きだから。
そんな俺の態度をまったく気にしていないりぃは、


「けんちゃん、明日嬉しすぎて泣いちゃうかもよ?」


と意味深なことを言ってきた。


「どーいうこと?早坂と何話したん?」

「秘密だよー」


たたでさえ今日早坂とどんなふうに過ごしてきたのか気になりすぎるのに、明らかに明日何かあるような言い方をされてモヤモヤする。


「優依先輩とたくさん話してみて、けんちゃんが好きになったのわかる気がした。私も先輩好きだなぁ」


俺のモヤモヤをよそに、りぃは無邪気な顔で笑っている。

その顔を見た途端、いっきに毒気が抜かれていった。

素直で裏表がない上に昔から人を見る目があるりぃに早坂のことをそう言われたら、悪い気はしない。


俺は軽く息を吐いて『そーかよ』とだけ答えた。



当日待ち合わせ場所に現れた早坂を見て、りぃの言っていたことがすぐにわかった。

おしゃれをしてきてくれたのが即わかるくらい、雰囲気がいつもと全然違っていたから。


今日はなんでそんな特別な感じなの?

前に図書館で会ってくれたときと全然違うのはなぜ?

こんなん、早坂が俺のことをそういうふうに意識してくれてるんじゃないかって嫌でも期待してしまう。


そうであってほしいと願いながら聞いたら、早坂は『夏海くんに喜んでほしくて』なんて可愛いことを言ってきて。

嬉しすぎて思わず抱きしめたくなったのを必死で我慢した。


昨日の口ぶりからすると、りぃはこのこと知ってたってことだよな?

あいつの言うとおりになるのは癪だから泣きはしないけど、でも泣きそうなほど嬉しいのは確かだった。
< 82 / 246 >

この作品をシェア

pagetop