どんな君も、全部好きだから。
「髪おろしてるの初めて見た」


ランチのとき、料理が運ばれてくるのを待ってる間、向かいの早坂をじっと見ながらそう言った。

早坂は恥ずかしそうに下を向いてるけど目を離してあげられない。

これはもう不可抗力だ。


「学校ではおろしたことないから」


その言葉に、俺以外の男は早坂が髪おろしたとこ見たことないってことかな、とか期待をしたりして。

そうだったらいいけど、学校の外で会ったことのある男は俺が初めてとは限らないよな。

このまえ三年のやつに嫉妬して早坂を怖がらせてしまったから、あんまり他の男のこと気にしすぎないようにしようと決めたけど。

本当はどんなことでもいちいち確認したくて仕方がない。


それに俺のために可愛くしてきてくれた早坂は、絶対学校のやつらには見せたくない。

できるなら、こういうふうにおしゃれするのは俺の前だけにしてほしい。


・・・いや、嫉妬深すぎて自分でも引くわ。

こんなん早坂には言えねぇ。


「すげぇ可愛い。めっちゃ好き」


自分のドロドロとした独占欲をなんとか飲み込んで、それだけ伝えた。

早坂にこんなこと言うのも、顔を真っ赤にさせるのも、俺だけがいい。
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