どんな君も、全部好きだから。

映画を観終わったらもう夕方だった。

帰路につきながら映画の感想を言い合ったり、その他にもいろいろ話をした。

早坂と何気ない会話ができるまで近くなれたことが嬉しい。

それに心なしか今日は早坂の笑顔が多い気がするし、会話もいつもより弾んでるように感じる。

やべぇ、めっちゃ仲良くなれてるんじゃないかこれは。

最高じゃん。


「そーいや昨日りぃと遊んだんだって?」


最寄り駅に到着後、早坂の家の方面に並んで歩きながら聞いた。

家まで送ると言うと早坂はいつものように申し訳なさ全開で断ってきたけど、俺は聞く耳をもたなかった。


「あ、そうなの。りぃちゃんと学校の帰りに会ったときに連絡先交換して」


早坂の方も『りぃちゃん』呼びになってる・・・。


「映画観る前にさー、今日は俺のしたいことしてほしいって言ってたよね?」


俺はずっと気になっていたことを切り出した。

実はそのことを考えすぎてちょっと映画に集中できていなかったりした。


「うん。したいことできた?」

「めっちゃできた。楽しかった。けど・・・もう一個だけしたいことあんだけど」

「そうなんだ。なぁに?」


優しい顔で俺を見上げている早坂を見つめながら、俺は意を決して口を開いた。


「下の名前で呼びたいんだけど。“優依”って。できればこれから先も」


りぃに先を越されて悔しかったっていうのもあるけど、ずっと呼びたいと思っていたのも本当だ。
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