どんな君も、全部好きだから。
早坂はしばらく目を見開いてフリーズしていたけど、みるみる顔が赤くなって俯いてしまった。


「優依、ダメ?」


俺は少しかがんで名前を呼びながら顔を覗き込む。早坂がこの仕草に弱いと知っててわざとだ。


「・・・・・・ダメ」


早坂は俺と目線を合わさず、眉をハの字にして困った顔で言った。

その顔とダメって言い方が可愛くてたまらなかったので、もうちょっと粘ってみることにした。


「何がイヤ?」

「・・・嫌なんじゃなくて・・・は、恥ずかしくて心臓爆発しそうだから・・・」


そう言った早坂は赤くなった頬を手で隠しながら、チラっと俺を見上げてくる。

いや、そんな可愛い顔でそんな可愛い理由言ってこられても『じゃあ、やめとく』とはならないけど?


「・・・わかった。じゃー優依って呼ぶ」

「えっ?!だ、ダメって言ったよ?!」

「優依がイヤがることはしないけど、イヤじゃないって言ったから。今日は俺のしたいことしていい日でしょ?」

「そ・・・そんな・・・」


あー、困ってる顔めっちゃ可愛い。

意地悪したい気持ちがこみ上げてきてしまう。我慢するけど。


下の名前で呼んだくらいで好きになってもらえるとは思ってないけど、俺が優依のことを特別扱いしてるっていうのはいつもわかっててほしい。

俺のこともっともっと意識してほしい。


「イヤだったらはっきり言って?優依がイヤがることは絶対したくないから」


俺は困っている様子の優依をじっと見ながら本当にイヤがっていないか探る。

本当の気持ちをちゃんと言ってほしいから、できるだけ優しく言葉をかけた。
< 85 / 246 >

この作品をシェア

pagetop