どんな君も、全部好きだから。
優依は途方に暮れた感じでしばらく視線を泳がせていたが、観念した様子で


「・・・嫌じゃない、です」


と小さな声で言った。


「嬉しい。ありがと」


嫌がられていないことが幸せすぎて、過去一で顔がだらしなく緩んでいたかもしれない。

本当は俺のことも名前で呼んでほしいけど、まぁそれはまだ早いよな。

いくらでも待つわ。


「優依が俺のこと好きになったら、俺も下の名前で呼んでね」


軽い感じでそう言うと、優依は『もう限界です』という感じで顔を完全に隠してしまった。

そんな可愛い仕草を見ながら、俺は確実に優依との距離が縮まっていることに喜びを感じていた。


と同時に、この距離感を失うことが怖いと思い始めていた。


絶対好きになってほしい。

付き合ってほしい。

赤い頬に触れたいと思ったり、抱きしめたいと思ったときに、それを我慢しなくていい関係に早くなりたい。

そう思っているのは確か。


でも、触れられそうで触れられないこのもどかしい距離感が心地良くて。

もし好きになってもらえなかったら、次もフラれたら、その時は何もかも失うことになる。


そんなことを考えてしまう自分の臆病さに、ほとほと愛想が尽きそうだった。


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