どんな君も、全部好きだから。
「そういえばこの前おすすめしてくれた本、読んだよ」

「あ、ど、どうでしたか?楽しめました・・・?」

「うん、すごく興味深かったよ」


先輩は読んで印象に残っている部分を何点かあげながら感想を教えてくれて、私はほっと胸をなでおろす。


「勉強大変なのに、読んでくれてありがとうございます」


私はペコリと頭を下げた。


「息抜きしたいって言ったでしょ。こちらこそ急に聞いたのにおすすめしてくれてありがとう」


そう言って爽やかに笑う先輩を見ながら、私は以前図書室できつい言い方をしてしまったことを思い出した。


「あの、この前図書室ではすみませんでした」

「え?」

「夏海くんのことを聞かれたときに・・・その・・・」


先輩は思い出したようで、『ああっ』と言いながら目を少し大きく開く。


「こちらこそあの時はごめんね。早坂さんのことが心配で、つい」


私を心配してくれている言い方に、やっぱり違和感がある。

なぜほとんど接点のなかった私を心配するの?

そんな私の微妙な空気を感じ取ったのか、先輩がおもむろに説明を始める。


「夏海くんのことは、彼が一年のときから知ってて。まぁ、うちの学校じゃだいたいの人は彼のこと知ってるだろうけど」


先輩は苦笑しながら言った。
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