どんな君も、全部好きだから。
「賢斗!パン持ってるけど食べない?」


夏海くんと青山くんの気の置けないやり取りにスッと入ってきたのは、クラス一可愛い女子、神崎さんだった。

神崎さんは三種類ほどのパンを抱えながら夏海くんたちに近づいていく。


「いいの?サンキュー」


神崎さんの手の中のパンをのぞき込む夏海くん。

二人が並んでいるのをちらっと見ながら、あまりのお似合いっぷりについ感心してしまう。

やっぱり、たくさんの女子から憧れられているかっこいい男の子には、クラスで一番可愛い女の子が相応しい。

そう思っているのは私だけじゃないみたい。

瑞希ちゃんと楓ちゃんも「ほんとお似合いだよねー」と小さな声で話している。


夏海くんと神崎さん。

仲の良い二人は、もしかしたらこのあと一緒に帰ったりするのかもしれない。

まだ早い時間だし、どこかに寄って帰ったりして。

二人は、いつか付き合ったりするのかな?

というか、もう付き合ってたりする・・・?

男の子と付き合うって、いったいどんな感じなんだろう・・・?


気が付けば私はまた恋愛についてぼやっと考えてしまっていて、楓ちゃんと瑞希ちゃんが私の名前を呼んでいることにしばらく気づいていなかった。

二人があまりに違う世界の住人すぎて、ツーショットを目にするたびにいろいろと思いを馳せてしまう。

いかんいかん、気を付けないと・・・。


選んだパンを開封している夏海くんと、楽しそうに笑っている神崎さん。

二人の姿を視界から無理やり外して、私は友人たちと教室を後にした。


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