どんな君も、全部好きだから。
「周りが噂してるの聞いて不真面目なイメージがあったんだよね。早坂さん、あんまり話したことはなかったけどおとなしい子だなって思ってたから、全部押し付けられたりしてないかなって。でもその心配はなかったみたいだね」


先輩は少し眉を下げて穏やかに笑いながら言った。

や、やっぱり夏海くんのイメージが独り歩きしてしまってるんだな・・・。

あんなに優しくて気遣いのできる人なのに、なんだか嫌だな・・・。


「でも違う心配がまだあるよ」


私が夏海くんのイメージのことを考えてモンモンとしている中、先輩が少し声のトーンを落として言った。


「早坂さん、夏海くんと付き合ってるの?」


思いもよらないことを言われて、私は思わず身体が硬直してしまう。


「二人を見かけたんだよね、先月図書館で。他に連れもいなさそうだったしびっくりしたんだけど」


ゴールデンウィーク初日の夏海くんと勉強した日、先輩も図書館に来ていたっていうこと?


「あ、あの・・・図書館には行きましたけど、付き合ってはないです」


頭がごちゃごちゃしているけど、とりあえず事実ではないことはちゃんと否定しなきゃ。

あらぬ誤解をされたままじゃ夏海くんに迷惑がかかってしまうかもしれない。
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