どんな君も、全部好きだから。
「あっ!優依先輩だー!」


突然名前を呼ばれてビクッとなる。

私をこういうふうに呼ぶ人は一人しかいない。


「りぃちゃん」


振り返ると、りぃちゃんと青山くんが並んで私の方に向かって歩いてきていた。


「こんなところで何してるんですか?」


りぃちゃんが無邪気な笑顔で聞いてくる。

一年生の階の渡り廊下で二年生の私が一人でぼーっとしてたらそりゃ変に思うよね。


「ちょっと寝不足で、気分転換してたの」

「寝不足大丈夫ですか?あ!そーいえば、この前のデートどうでした?」


ん?デート?

自分とは縁のなさそうな『デート』という単語にハテナマークで頭がいっぱいになる。


「けんちゃんに聞いても何も教えてくれないから気になってて。ね、蓮?」


りぃちゃんのその言葉で、『デート』というのがこのまえ夏海くんと映画を観に行った日のことを指しているのだと気付いてとてつもなく恥ずかしくなる。

もしかして夏海くんはデートのつもりでいてくれてたのかな・・・。


「あいつニヤニヤを抑えきれてなかったから上手くいったのかとも思ったけど」


りぃちゃんに話をふられた青山くんが淡々と答える。

そういえば青山くんとこの距離で顔を合わせるの初めてだな。


「もしかして付き合うことになりました?」


りぃちゃんが顔を近づけて小声で聞いてきたので、私は慌てて勢いよく首を振る。


「そっかぁ。もう何やってんだろあの人。ちゃんとアピールしてるのかな」


私の全力否定を受けて、りぃちゃんはプクッと頬をふくらませて怒った顔で呟いた。

こんな表情も可愛いなんてさすがだな。
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