どんな君も、全部好きだから。
そんな私の様子と、近づいてくる夏海くんたちを交互に見ていたりぃちゃん。


「あれ、何してんの?」


話しかけてきたのは夏海くんの方だった。

りぃちゃんと青山くん、そこに私もいたからよけいに疑問に思ったかもしれない。


「優依先輩の悩みを聞いてたんだけど?」


明らかに怒っているような声色でりぃちゃんが答えた。


「悩み?」


夏海くんの声のトーンが下がった瞬間、私の心臓がドクンと音を立てた。


「そーだよ。けんちゃんには教えないけどね!」


りぃちゃんの怒ったままの声と、無言の夏海くん。

私は下を向いたまま顔を上げられないでいたけど、なんとなく夏海くんの視線を感じていた。


「賢斗?先行った方がいい~?」


先に進んでいた神崎さんたちの声が、少し離れたところで聞こえる。


「あー、先行ってて―――」

「り、りぃちゃん、お話し聞いてくれてありがとう。もう予鈴鳴ったから行くね」


夏海くんが私と話をしようとしているのを感じたので、私は慌ててその場を後にする。

今は気持ちがぐちゃぐちゃで夏海くんと何を話していいのかわからない。


「あ、優依先輩!」


りぃちゃんが私を呼ぶ声が聞こえたけど振り返らなかった。

お願いだから今は誰も私を追いかけてこないで。

そんなことを願いながら教室まで走った。


こんな態度をとって、きっと夏海くんに変に思われた。

これからどんな顔して話せばいいのかもうわからないよ。


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