麻衣ロード、そのイカレた軌跡➍/赤き牙への狂おしき刃
その6
夏美



「荒子、お疲れさん。ご苦労だけど、この後の”対処”しっかりと頼むわよ。最初が肝心だからね…」

「ええ、夏美先輩、先ほどは迅速な対応、ありがとうございました。先輩方が魂を賭して繋いでくれた、神聖なこの集会を汚したバカどもには、しっかり示しをつけます。身内だろうが外様だろうが、私は一切区別しませんから。ご安心を」

合田荒子…

考えてみれば、出るべくして出てくる存在だったのだろう

そのストレートなイケイケは、今の時代の先端だ

紅子さんに対するリアクションでは、ごく必然的な出現と言っていい

しかし、その純真な心は理解できても、極傾すぎるよ

荒子がトップになれば、従うものが増えるのも危険だが、対立軸ができた場合、その衝撃度はそれだけ大きい

まして、その対立する相手が、いずれはあの本郷麻衣となる可能性は極めて高い

この二人には、落としどころとかって果たして存在するのだろうか…


...



テントに内には次々と幹部が集まってきた

「いづみ、例の件は最後だからね。まずは形式的に済ませてからよ」

「ああ、先輩、だいじょうぶですよ。承知してますから…」

はは…、そうは言っても、顔真っ赤でかなり熱くなってるよ、いづみは

テント内に入ってきた補佐控えとして新執行部を担う一員のいづみに対し、まずはクギを打っておいたわ


...




「夏美、さっきはさすがだったな。あそこで騒ぎが起きたら、セレモニーが中断しただろうから。まあ、”後始末”はそれなりでやろうや」

土佐原先輩は、私へなんともいぶし銀の一言だ(苦笑)

「全員揃ったみたいだから、総長、始めようや」

その土佐原先輩がテント内を確認してから、新総長の荒子にこう声をかけた

さあ、荒子、あなたの手腕が試されるわよ

紅子さんの神髄を汲んでる自負があるなら、大局を見失っちゃダメよ

私は自分でも容易に想像できるような鋭い視線を、荒子の顔に浴びせていた



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