麻衣ロード、そのイカレた軌跡➍/赤き牙への狂おしき刃
その9
夏美



達美と私は無意識に顔を見合わせていた

二人は無言だったが、やや含み笑いもしていたかな…

「ハハハ…、ご両人とも、そう急くことはないさ。いきなりの話だからな。お役の押し付け合いは、後でゆっくりやってもらえればいいんだ。誰もが認める名コンビだし、落ち着くところが最善と皆受け入れるさ…」

テント内のみんなからは、こぼれ笑いだよ…

「じゃあ、夏美とはあとでゆっくり、押し付け合いやりますんで。万一、紛糾するようだったら、先輩、今度の幹部会で収めてください」

達美ならではだなあ…、こういうの

ユーモラスなリアクションに、皆、クスクスとハハハの間のような笑い声だわ


...



そして、ここからミーティングに入った

この7人で新体制下における当面の方針を協議し、認識を共にするのが目的だ

それは必然的に、目の前の課題と懸念をクローズアップさせる訳で、今回は取分け、新入メンバーに対する対応が焦点になってくる

今日の親衛隊とドッグスの揉め事への対処は、その第一歩だ

これって、今後を踏まえると極めて重要だよ

今、きちっとした形で決着させとかないと…


...



「では、本題に入ろう。俺らからしたら全幅の信頼をおく新体制だが、周囲からはイケイケの過激路線と受止められる向きは否定できない。その現実を踏まえて、荒子、当面どういく?」

先程、OB代表の勇退を申し出た土佐原先輩だが、この場の進行はこの人しかいない

「先程の集会での所信表明通りです。ここまでの、本格的な女の集団ができたんです。以後は単に足元の後輩だけではなく、外部に向かって、その広がりを希求していくつもりです。発信し、全うする。走ってく方向はそこです」

「理念はわかる。だが、その行き着く先は、お互い肩を組んで歩を進める仲間より、反目する対立相手を増やす土壌を産むんじゃないか。そういう危惧は正直、大きいよ。みんなで選んだリーダーだ。協力はやぶさかじゃないが、その前提として、せめて組織内の融和は大事にしてもらいたい。それを含んでの、ポスト面でのビジョンを伺おう」

うーん、OB、OGもさっきはああいう言い回しだったけど…

荒子体制が劇薬含みなのは、重々承知されての身の処し方だったのだろう

むしろ、現状への危機感は私たち以上かもしれないよ





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