麻衣ロード、そのイカレた軌跡➍/赤き牙への狂おしき刃
その10
夏美


「はい。私は今言った方針に邁進します。対外的には、補佐の鷹美に一任です。特に、精神的支柱である紅組の新たなリーダー嵯峨ミキ先輩とは、当組織の幹部の決定事項も共有するくらいの協調を目指していきます。内部の全般については、補佐控えのいづみにあたってもらうつもりです」

荒子の返答は極めて明確だった

「うん、順当だと思う。それでだ…。当面の懸念という点では、実際のところ外部より内部の方が大きいんじゃないか?今日の騒ぎを取り上げるまでもなく、1年同士のいがみ合いがこうもあからさまじゃあ、ガキのケンカ以下だよ」

ここでもみんな、大きく頷いてる

「そんな体たらくで、外部へ広がりだの、おこがましい…。正直そういう気持ちもあるよ。まずは足元をしっかり固める。その点は、しっかり取り組んでもらいたいんだがね…」

かなり鋭いところを突くなあ、今日の先輩…

幾分、荒子は表情がこわばってきたかな…


...



「はい!言われてること、十分承知です。1年坊の指導は私が責任を持って、間違った方向へ向かわないように全力を注ぎます」

「ああ、わかってる、荒子。まあ、具体的に行こう。親衛隊とドッグスだ。両方とも荒子の直属だよ。だが、前者は私的集団、後者は南玉公認組織だ。だが一方、そのまま身内、外様という視点もある」

うわあ…、これもそのものズバリだ

うん、こういった点はスタート段階できちっと整理しとかないといけないんだよな、やっぱり…

「こういう矛盾に下の連中は、まあ、敏感に反応するんだろう。その辺を見過ごしてちゃあ、内紛に至る。今後のことだが、そのあたりは改善を試行してくれ」

「先輩、すでに腹は決しています。親衛隊はたった今、解散します。で、そのメンバーをそのまま特攻隊に配属させます。これで、総長の私的チームはなくなります。加えて、特攻隊長は当面、補佐の鷹美に兼任してもらいます。以後は、特攻隊もドッグスも鷹美が所管です」

「鷹美、それは了解してくれるのか?」

「はい。重責ですが、荒子を支える大義で引き受けます」

何ということだ…

OBの御大が懸念していた当面の重点課題を、あの二人はすでに…

高校入学早々、街中で大乱闘をやらかした仲なのに…

ライバル心はともに激しいものがあるだろう

特に鷹美は、カリスマ的な支持を得る荒子を支える立場で、今までも大変な思いをしてきたというのに…

みんな、私たちが考えてる以上に、南玉全体のことを考えてくれてるんだ

私は嬉しかった…、とても



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