麻衣ロード、そのイカレた軌跡➍/赤き牙への狂おしき刃
その11
夏美


それにしても驚いた

新体制スタート時点で”あの二人”に、申し合せが出来ていたとは…

本郷がその本性を剥き出しにして向かってきた時、この二人が結束できていれば撃退は十分可能だわ

「この人事は的を射てるな。みんな、賛成でいいかな?」

当然、反対者はいない

「じゃあ、オレからはこの辺にして、前執行部からのオーダーがあればどうぞ」

私は達美に目線で合図をおくった

達美はわずかに頷き、折り畳みのイスに座ったまま、発言に入った


...



「私らからも、今の話の延長になりますが、やはり下のモンへの処し方には十分かつ細心の注意が必要ですね。あれらには、この場の方針をきちっと告げた上で、つまらない小競り合いの生じない土壌にすることが大切でしょう。そこで、従来、補佐控えは早晩1年からという慣例を当面、留保してはどうかなと…」

前年の鷹美もそうだが、補佐控えには、年少の次期幹部候補をあえて起用していた

表面上は南玉内のナンバー3に相当する

なので、今の状況だと、このポストを視野に入れた1年同士の対立が危惧されるからね…

無論、あの本郷に”仕掛け”の材料を与えないという狙いもある

アイツなら、そのくらい読み込んだ”絵”を描くなど容易いことだろうし

「ポストを睨んでの対抗意識を凍結することで、1年同士の不毛な争いの芽を摘むことにつながるしね。当分、いづみが補佐控えで継続していくことを、連中へ最初に告げておくのが有効だと思います」

達美のこの提案も、全員が賛成だった

「じゃあ、いづみ、ご苦労だが頼むよ。問題児の多い担任クラスがいくつもで、大変だろうけどさ…」

ここでもみんな苦笑いだ

いや、いづみだけは真顔だよ…(笑)

で、顔を火照らせて、席を立ったわ

「はい、全力で当たって行きます」

ふふ…、いづみはやる気満々で頼もしいや…


...



南玉内においての達美と私は、いづみとはオポジションの側ではある

しかし、現状では彼女のようなタイプの方が、1年両派の頭を押さえるには適任だという考えだった

「でもさあ、いづみ一人ではキツイと思うので、人員面での協力体制を執行部で考えてもらえるかな?」

荒子と鷹美は同時に頷いた

「そんで、さっきから話題の中心になってる、”旧”親衛隊とドッグです。早速今日、問題を起こしたらしいので、これは今後の再発を絶つ意味でも、この場できちっと措置をとってもらいたい。で、こっから先は、実際に現場に立会った夏美といづみで頼む。なら、よろしく…」

さあ、ここで私の役回りとなった

外では本郷も待っている

ヤツを少しでも追いつめるセッティングをしないと…




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