麻衣ロード、そのイカレた軌跡➍/赤き牙への狂おしき刃
その12
麻衣



テント内の”会議”はすでに20分を超えた

さてさて…、7人の重役たちは何を決めてることやら

文字通り出たとこ勝負となるわね

ふふ、あの相川がどんな舞台設定で、私をテント内に迎え入れてくれのかしら…

ドキドキだわね、ハハハ…


...



一方、テントの外では、ドッグスと親衛隊が全員待機となってる

見張り役も湯本先輩を筆頭に、何人も張り付いてるし…

私らと親衛隊の連中とは、10Mほどの距離がある

湯本先輩は最初5M位の間隔だったのを、「近すぎる!」って更に隔離してさ

あんたこそ、相川に「近すぎる!」って言ってやりたくなったけどね…(笑)


...



それと、テント外では別にもうお一方だ

さっきからドッグスと親衛隊を行ったり来たり…

言うまでもなく、木戸真澄先輩だ

木戸ちゃん、最初に親衛隊の方へ寄ってからこっちへ来てくれた

私とは2、3分一緒にいてくれたよ

実際の話と、話してるフリと、そしてアイコンタクトでの濃密な会話もね

これは、周囲に対するアリバイ作りも兼ねているんだ

木戸ちゃんもそれを承知してるようでさ…

周りの目を意識した声の大きさ、細かい動作なんか、なかなかだったわね(苦笑)

集会の途中で久美に遣わしたシグナルは伝わっていたみたいだし、まあ安心した

その後再び、”あっち”の陣営でもいろいろとお話ししてるよ(苦笑)


...



あの人、どうやら事前に荒子新総長やいづみ先輩とも私らの事案について、言葉を交わしたらしいしや

この後のテント内での”証言”は、あの人なりにシュミレーションが出来てるんだろう

はは…、助かるよ

とにかく、この後は頼んますってとこだ


...


10M先に目をやると、”奴ら”10人ちょうどだ

あの浅黒のチビ…、案の定、先頭に立って張り切ってるわ

ええと…、そうだ本田だ

下の名前は、うっとしい3文字だったな…

思い出したわ、たしか多美代とか言ってた

喫茶店の前でばったり会った時は、汗臭い3人雁首揃えてたな…

浅黒はあのカモシカ女と、やけに気が合ってたわ

まあ、生きがいいし、向こうは奴がリーダー格かな

本田多美代め、今日はよくも久美を痛めつけてくれたな!

しっかり覚えとく


...



そこへ久美がやってきたわ

「中、まだかな?」

「ああ、今頃は間違いなく、私らの事案を揉んでるさ。いいか、さっきも言ったけど、中では先輩らに聞かれたこと以外、余分なことはしゃべるな。私の言ったこと、行動をなぞってればいい。みんなにもその辺、しっかり言っとけ」

「わかってる。今のメンバー全員、私の言うことにはちゃんと従ってくれるからさ。大丈夫さ」

久美はニコッと笑った

「うん、助かるよ。お前がちゃんと仕切ってくれてるんで、最近はさ。ああ、久美、これ終わったらちょっと付き合えるか?」

「え?別に時間とか全然平気だし、OKだけど…」

「じゃあ、後でな」

久美は「うん」と言って、他の仲間のところへ戻って行った

”中”が終わったら、こっちの進むべき道は即、決っする

立ち止まってる時間はない

久美にも加速してもらおう…




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