麻衣ロード、そのイカレた軌跡➍/赤き牙への狂おしき刃
その4
夏美



真澄の証言は、私から言わせれば、取るに足らない空言だ

でもまあ、彼女の話し方には、それなりに説得力があった

他のみんながどう捉えたかは、一概には言えないわ

とにかく、危険だ…

今の立場の真澄がこんなじゃ


...



「週末の集会は、亜咲が去ったことで本郷が急きょトップを担うことになった重責を踏まえて、決断したようです。半端な気持ちの人間は振るい落として、ぜい肉を削ろうと。上に言えば、当然止められるので、あえて無断で決行したということで、まあ、それなりに悲壮な決意もあったみたいですね」

おそらくこの言い分はこの後、本郷が繰り返し主張するだろう

「…ドッグスは外部への広がりという荒子の理念を、深く受止めているようです。亜咲の意志を継いで、”走り”の宗家として外部のチームを吸い寄せる求心力になっていかなきゃって…。紅丸さんが去った今、もたもたしてたら、女の決起が立ち往生どころか、あっという間に枯渇しちゃうと。そんな危機感も持ち合わせているように覗えましたね」

これは真澄の意見だろう

「だから、奴らははやってるところもあるし、けしからんけど、なんとか活かす工夫を考えるのが大事じゃないかと思うんです。まあ、私の方はこの辺で終わりにさせていただきます」

真澄の話は実質、ドッグスの弁護だった

ただ、本来なら親衛隊側に立つスタンスだから、”前節”で中立を前置きしていた手前、必然性はあった

全く…、したたかな計算が見え隠れするわ

もっとも、それは本郷の誘導かも知れないけど


...



「真澄、ご苦労さん。君の中立な姿勢は十分伝わったよ。気持ちが熱くなりすぎて、証言というより演説に近かったけどなあ…(苦笑)。まあ、今日は特別な日だから…、みんな熱くなってるがね」

土佐原先輩がまたさり気なく、テント内の空気を中和してくれたわよ

さあ…、これを受けて、荒子と鷹美がどう動くかだ

「真澄先輩、ありがとうございました。今のお話、しっかり受け止めた上で、現トップの対応を処したいと思います。恐縮ですが、これでご退席いただけますか?」

「ええ…、それじゃあ、失礼しますね」

荒子が丁重にねぎらい、真澄はテントを出た


...



「…先輩方、集会が行われたのは事実のようですし、概ね、今日の騒動その他諸事情も把握できたと思います。この後、外で待たしてある1年連中には、ここに呼んで南玉連合のとしての処分を突きつけます。当然、事実確認はいたします。で、ここで4人の皆さんには、”結論”を聞かせていただきたいのですが…」

荒子はの口ぶりはいつになくソフトだった

「まず、相川先輩、お願いします」

私が一番手に指名されたわ

それじゃあ…

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