麻衣ロード、そのイカレた軌跡➍/赤き牙への狂おしき刃
その3
麻衣



その沈黙はどのくらいだったろうか

とにかく私にはとても長く感じたわ

そして、荒子総長がやっと口を開いてくれた

だが、話しかけた相手は私ではなく、矢吹補佐に対してだった

「鷹美、どうだ?コイツの今の話…」

「”クリア”の件は一応、筋、通ってるでしょ」

おー、ナンバー2の矢吹さんは理解してくれたわ

「うん、そういうことになるか。じゃあ、これはこれでいいか…」

なんか、予想外にすんなり行きそうなんだけど…

だが…

新執行部の3人は、その間もずっと冷めた視線を私に浴びせ続けてる

ちょっと雰囲気、変なんだよな…、さっきから


...



「本郷、東京もんの件、それは前向きで考えよう。でだ…、肝心なのは、そもそもお前の素行だ。テント設営の時はまあ、別としても、集会の最中の騒ぎはお前の側が明らかにけしかけた。これは湯本敦子とその後輩、さらに回りにいた複数の人間がはっきり目撃している。どう見ても、喧嘩両成敗では旧親衛隊の連中が気の毒だ。これは、ここにいる3人の共通意見になる」

はは…、こりゃ、私が畳み込まれてるわ

「今一度聞くぞ。お前、ドッグスのテントにかかわった6人以外のメンバーに、指示出したんじゃないのか?」

「いえ、私は”直接”、指示を出してません」

「また意味深な答え方だな。なら、間接的には指示出したってことかよ?」

「間接的とかってことではありませんが、要は同じです。コピー連中には負けるな、向き合ったら、やってやれ。そういうことは言ってました」

「お前な、そこまで言ってりゃ、ケンカをしかけてるのと一緒だ。それと週末の集まりも百歩譲ったって、組織の規律を無視した暴挙だ。断じて許し難い。そんなもん見過ごしたら、南玉は無法集団になってしまうさ。さあ、そうなると、お前にはどう対処を下したらいいか…」

いつも思うんだが、この狂犬娘は言葉が深く、そして重い

単なるイケイケじゃない

それこそ舐めてたら、喰いつかれる…





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