麻衣ロード、そのイカレた軌跡➍/赤き牙への狂おしき刃
その4
麻衣



「お前…、勘のいい方だろうから、”私たち”が何を言いたいか、もうわかってるよな?」

なるほど…、”私たち”ってことか

今、はっきりわかったわ

この3人の妙な視線…

そういうことね…、了解だ

「…あのコピー連中には、結果的にケンカを売ってたことになる。これは、認めざるを得ません。本意ではありませんが…。で、この私は何をすればいいんですか?」

この時点で、私は条件折衝から、落としどころの探り合いにシフトしたことを悟った


...


「いいか…。一新入のお前に、ここまで好き勝手にやられたんだ。本来なら、本郷、お前は南玉除名でドッグスは解散だ。正直、私ら3人はできればそこまで下したい」

まあ、当然だよな…

私のやってること、カンペキ滅茶苦茶だもん

それは自覚してる

「だが、さっきお前が言ったように、南玉では”走り”の部隊がタブーだった。私を含め、皆ができなかったことを、いとも簡単に突破した行動力、それと、亜咲さんの南玉カムバックという難事を実現させたお前の功績は、正直、認めてるんだ」

ここでもリアリストの一面が垣間見られた

どうやら、狂犬さんはここでボールを投げてくるだろう

「…そこで、私の好むところではないが、条件を出す。お前が旧親衛隊の連中に頭を下げ、ケンカを売ったことを認めるんだ。次に、組織の規律を乱し、週末の集会で勝手極まりない暴挙を行ったことの猛省を宣誓しろ。そして、今後、組織の統制を乱すような行動は絶対しない。それを確約しろ。できるんなら、今回は厳重注意ということで、取りなしてやる。どうだ?」

「…」


...



私は即答できなかった

答えは出ている

だけど、こういう展開は想定していなかったので、躊躇を拒めなかったんだろう

この3人、綿密にシュミレーションを敷いていたんだ

私の行動を、アジテーションと見切っていた訳ね

この新しいトップ3人を過小評価していたわ

「総長、矢吹補佐、恵川先輩、承知しました。それでお願いします」

私は両手を両足に添えて、頭を下げた

「よし、これで決まりだな。お前も旧親衛隊全員にじゃあ、抵抗があるだろうから、代表ひとりに、さっきお前と一緒にぶん殴った奴の2名ということでいいか?」

「はい、お気遣いありがとうございます」

この狂犬はまあ、武士だな

矢吹補佐もだ

いづみ軍曹は…、ちょっと違うけど(苦笑)

とにかくだ…

南玉連合の新しい執行部3人は、ある意味、前任より強力な陣営と言える

こりゃ、手ごわいわ…



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