麻衣ロード、そのイカレた軌跡➍/赤き牙への狂おしき刃

その４
夏美



今、テント内には、新執行部の３人に達美と私、更に土佐原ＯＢ代表と甲斐由美子ＯＧ代表の７人が揃っている

土佐原先輩の進行で、新旧執行部の形式的な継承を終え、集会後に再度このメンバーで集まり、細かい今後の方針等を打合せすることになっている

ここで雑談の場になったので、私は”例の件”を持ち出すことにした

「あのう、土佐原先輩、ちょっとお聞きしてよろしいですかね？」

「ああ、何かな？」

「荒子には伝えてあるんですけど、実は、テントの設営を巡って親衛隊とドッッグスが乱闘騒ぎを起こしたんですよ…」

私は双方から聴取した言い分の内容を、みんなに伝えた

その上で、実際に設営の現場に立会っていた、ＯＢの土佐原先輩に、テント設営の経緯を伺った

「ああ、なんかあったらしいな。俺もさっき、他から耳にしたんだが。いやあ、俺としたことが、６人揃っていたんで、てっきり親衛隊とドッグス双方からの先発隊だと、思い込んでたんだ。一応、確認したつもりだったんだが…」

先輩の”確認した”という一言が、まずは引っ掛かった


...



「そうだったんですか…。で、先輩、ＯＢの皆さんも１時間前にお越しいただいてたのは、やっぱり、先輩も時間、勘違いしちゃったんですかね…？」

私は、失礼にあたらないように、軽いノリを意識して、さりげなく突っ込んで確認した

先輩は苦笑いしながら、この辺の事情も即答してくれた

「いや、いや…、実は昨夜、真澄から電話で連絡があってね。３時には現地へ着くように変更したんだよ」

え…？真澄が…、どういうことだろう