麻衣ロード、そのイカレた軌跡➍/赤き牙への狂おしき刃
その7
多美代
本郷は私たち二人の眼前で、土下座をしている
そして、己の言い分ははっきり主張した上で、非は認め、あらん限りの声で謝罪した
その姿に、私は正直、ショックを受けた
大っ嫌いな奴だし、卑怯者だとも思うよ
しかし、このけじめのつけ方…
少なくとも、私にはできない行為だ
なんだかんだ言っても、大した奴だ、コイツ
...
そもそも本郷麻衣は、高校生になって僅か2か月程度の間に、とてつもない行動の足跡を残している
あの高原先輩をカムバックさせて、南玉連合宿願の公認チームを作り上げ、2年前の紅組・墨東会間に締結された協定のカベを正面から突破した
荒子さんでさえ、出来得なかったことなのに…
今、コイツは1年坊でありながら、高原先輩が去った後、ドッグスのリーダーとしてメンバーを引っ張ってる
さっきは火の玉川原の土手面で、急降輪をやってのけた
OG・OBを含め、その見事な腕と度胸に、諸先輩は皆唸っていたよ
私と一緒でこの春、高校に入った新入生だよ、本郷は
人によっては、相和会のバックがつているからとか言ってるが、その傘に頼りきりの人間が、この場でこんな謝罪ができるだろうか…
コイツ、本物だよ…
これは認めざるを得ない
荒子総長だって、本郷の”その辺”は評価しているはずだ
あの人は好き嫌いとかで、アンフェアに流れる人ではない
よし…、コイツとはこれからも正面からぶつかっていってやる
今日のところは、これで収めよう
...
「どうだ、本田、冴木‥。本郷の気持ち汲み取ってやれるのか?」
荒子さん…
「さえ…、私はこれで納得だ。あんたはどうだ?」
私は、土下座して頭を床にこすりつけている、本郷をじっと見つめたままのさえに問いかけた
「…正直、この人のこと、信用はできない。でも、ここまでされれば、私はそれ以上は…、言えないわ」
さえは、ここで本郷から視線を外し、私の方を向いて言ったわ
なら、決まりだ…
「総長、総長補佐、いづみ先輩。私らは今日の件、これで水にします。外の連中にも、責任を持って納得させます。本日は大変ご迷惑おかけしました…」
私はそう言いながら、執行部3人にお辞儀した
「…本田、冴木、じゃあ、みんなにはこの旨、しっかり伝えてくれ」
「よし、お前ら二人はこれで外に出てろ」
総長は穏やかな語り口、いづみ先輩は相変わらず軍隊調だった
「本田…、頼むぞ!」
荒子総長はテントを出る間際に、再度声をかけてくれた
その顔、とても”優しい”表情だったよ
あの人には決してそぐわない表情だけど、私は妙にうれしかった
さあ、みんなに報告だ…
多美代
本郷は私たち二人の眼前で、土下座をしている
そして、己の言い分ははっきり主張した上で、非は認め、あらん限りの声で謝罪した
その姿に、私は正直、ショックを受けた
大っ嫌いな奴だし、卑怯者だとも思うよ
しかし、このけじめのつけ方…
少なくとも、私にはできない行為だ
なんだかんだ言っても、大した奴だ、コイツ
...
そもそも本郷麻衣は、高校生になって僅か2か月程度の間に、とてつもない行動の足跡を残している
あの高原先輩をカムバックさせて、南玉連合宿願の公認チームを作り上げ、2年前の紅組・墨東会間に締結された協定のカベを正面から突破した
荒子さんでさえ、出来得なかったことなのに…
今、コイツは1年坊でありながら、高原先輩が去った後、ドッグスのリーダーとしてメンバーを引っ張ってる
さっきは火の玉川原の土手面で、急降輪をやってのけた
OG・OBを含め、その見事な腕と度胸に、諸先輩は皆唸っていたよ
私と一緒でこの春、高校に入った新入生だよ、本郷は
人によっては、相和会のバックがつているからとか言ってるが、その傘に頼りきりの人間が、この場でこんな謝罪ができるだろうか…
コイツ、本物だよ…
これは認めざるを得ない
荒子総長だって、本郷の”その辺”は評価しているはずだ
あの人は好き嫌いとかで、アンフェアに流れる人ではない
よし…、コイツとはこれからも正面からぶつかっていってやる
今日のところは、これで収めよう
...
「どうだ、本田、冴木‥。本郷の気持ち汲み取ってやれるのか?」
荒子さん…
「さえ…、私はこれで納得だ。あんたはどうだ?」
私は、土下座して頭を床にこすりつけている、本郷をじっと見つめたままのさえに問いかけた
「…正直、この人のこと、信用はできない。でも、ここまでされれば、私はそれ以上は…、言えないわ」
さえは、ここで本郷から視線を外し、私の方を向いて言ったわ
なら、決まりだ…
「総長、総長補佐、いづみ先輩。私らは今日の件、これで水にします。外の連中にも、責任を持って納得させます。本日は大変ご迷惑おかけしました…」
私はそう言いながら、執行部3人にお辞儀した
「…本田、冴木、じゃあ、みんなにはこの旨、しっかり伝えてくれ」
「よし、お前ら二人はこれで外に出てろ」
総長は穏やかな語り口、いづみ先輩は相変わらず軍隊調だった
「本田…、頼むぞ!」
荒子総長はテントを出る間際に、再度声をかけてくれた
その顔、とても”優しい”表情だったよ
あの人には決してそぐわない表情だけど、私は妙にうれしかった
さあ、みんなに報告だ…