麻衣ロード、そのイカレた軌跡➍/赤き牙への狂おしき刃
その2
真樹子



とは言え、倉橋さんは決して私らにちょっかいとかは出さず、”紳士”で相手してくれてたわ

リエもすぐに警戒感がほぐれたらしく、倉橋さんにいろいろと聞きまくってるし…

そして、また店の重い扉が、今度は勢いよく開いた

「こんばんわー!」

振り返ると、津波祥子だった

「祥子ー!待ってたわよ。さあ、こっちいらっしゃいよ」

少々酔いが回ってきたせいか、私は早口でまくし立てちゃったわよ


...



「ああ、祥子、面識はあるはずだけど、この人が”あの”立役者、迫田リエよ」

「ああ、例の”会議”ん時に会ったね。やっぱり、アンタは残ったのか…」

「こんばんわ、津波さん。あなたこそ、いきなり豹子さんとタイマンですってね。体も大きいし、あの”会議”では他の連中を圧倒してたもんね(笑)」

「全くそうだったよね…。でも、リエだけは全然、臆してなかったじゃない」

私は”あの”会議の席を、大場さんと共に仕切っていた立場だったからね…

なにしろ、この二人、あの中では突出してたよ

「私は鈍感なのよ、所詮。まあ、逆に言えば怖いもの知らずってとこだけど。ハハハ…」

「とにかく、よろしくだよ、皆さん。ああ、私はここに座っていいのかな?おじさん、いいですか…、隣…」

わー!

祥子のヤツ、撲殺男の隣に座る気だ…


...



「おお…、どうぞどうぞ…」

倉橋さんはニヤついてるし…

「しかし、体大きいな、キミ」

「でかいだけですよ。色気は全然ないし、頭はバカだし。高校2年通ってて、まだ1年坊ですよ、私…。アハハハ…」

ここで、みんな爆笑だしね…

祥子、明るいわ

楽しい…、なんだか

麻衣さんを軸として、こんな愉快な連中がこんな形で集結した

廃倉庫のあの日を思い出すわね


...



フフフ…

麻衣さんは、この二人をこれからの試金石として、大博打に出たのよ

高原亜咲の襲撃、高滝馬美粛清のタイマン…

考えてみれば、いずれも凄まじい仕掛けだったわめ

とても一高校生で描ける”絵”じゃないし、なせる芸当ではない

その絵図に従って、この二人は見事に麻衣さんの期待通りやってのけた

そして、今日…、南玉連合の新たな門出たる総集会で、麻衣さん自身も大博打に出たはずだ

その結果はもうすぐ、ここにやってくる我らの総師、麻衣さんの口から直に聞けるはずだ

その次第によって、このメンバーで更なる仕掛けにかかるんだ

ハハハ…、痛快極まるよ

”怪物”紅丸有紀をなぞってるだけの奴らには真似のできない、誰にもやれなかった”コト”を起こしてやるんだ、私らは

この夏、都県境の奇跡の地、ホットスポットで…




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