麻衣ロード、そのイカレた軌跡➍/赤き牙への狂おしき刃
その3
麻衣



”ヒールズ”に着くと、メットを取った久美は、さびれた看板を見上げてる

「ヒールズ…。ここで誰かと会うの?」

「ああ…。今からここで、私と一緒に”道”を切り開いていく主要メンバーによる”席”を持つ。先週の伊豆でドッグス入りした津波祥子の他、私が全幅の信頼をおく幹部の面々と、今日の総集会の結果を踏まえ、今後の方針を決定するんだ。いいか…、今日からは、お前もその一員として私を支えてもらいたい。私の計画を全部話すよ、これから。大丈夫だな?」

私は一気に要旨を告げた

久美は目を真ん丸にして、私の顔をじっと見ていたよ

そして、興奮した様子で私に言った

「私、いいの?ここに入って…」

「当たり前だ。もはや久美は、私の計画を遂行する集団の最高幹部の一人だ。さあ、行こう。たぶん、他の連中はもう揃ってると思う」

久美の目は、瞳孔が開いているような迫力だ

飲み込まれそうだわ(笑)

そして私たち二人はヒールズの店内に入っていった


...



「おー、麻衣さん、お疲れ様!みんな揃ってるよ…」

真樹子さんはすでにほろ酔いの様子だ(苦笑)

「倉橋さん、ホスト役、ありがとうございました」

「いえ、みんな愉快なお嬢ちゃん達で楽しかったですよ。じゃあ、オレは2階にいますんで、何かあれば声かけて下さい。冷蔵庫の中は好きに飲み食いしてもらって結構なんで」

「はい、すいません。ああ、この子、”例の時”一緒だった同志です」

私は、後ろにくっついている久美を倉橋さんに紹介した

久美は倉橋さんにちょこんと頭を下げた

倉橋さんも、無言で同じくちょこんだ

「…」

倉橋さんは久美とほんの少しだが、視線を合わせていた

フフフ…、私はこの一瞬、見逃さなかったぞ

まあ、いいや…


...



「豹子さん、とにかく座ってよ」

迫田リエが声をかけてくれた

「ああ、久美…、お前はここだ。私は祥子の隣、行こうっと」

私は久美を真樹子さんの左に座らせ、自分は”大女”の右側にどんと座った

「ははは…、麻衣、どうした?その顔の”でこぼこ”は…」

その大女、祥子がさっそく突っ込んできたわ

「狂犬に噛みつかれた…」

私は、あえて低いトーンで囁くように、こう答えた

そして、4人の反応をさり気に覗った

久美以外、ニヤニヤと微笑を浮かべてる

なるほど…、この3人、私の言った意味は理解してくれたらしい




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