麻衣ロード、そのイカレた軌跡➍/赤き牙への狂おしき刃
その8
夏美



「先輩、どうします?」

私は考えた…

ここで奴のシッポを掴むのも手だ

しかし…

今日のこの場は、そんなことのためにあるんじゃない

奴が何を考えているにせよ、この大切な集会を無事終わらせることが、やはり最優先だろう

「あっこ、ここは、何があっても騒ぎを防ぎましょう」

「ええ…。で、どうやって対処しますか?」

「私の後輩も使っていいから、まずドッグスと親衛隊両メンバーの今の位置関係を把握してきて。ええと、ドッグスは結局、現在何人くらいなの?」

「本郷を入れても、10人前後まで減ったようです。先輩、だいたい親衛隊と同数ですよ」

「うん。なら、集会が終わるまで私らでマークしましょう。コトが起きる前に、現場を抑えて排除するのよ。それと、このことは達美には言わないでおいて。今日の集会は、荒子と並んで主役だから。こんなくだらないことに携わらせたくないわ」

あっこはニヤッと笑って頷き、走って行った


...



そしてまもなく、総集会の幕が切って落とされた

「みんな、今日はご苦労様。今回、代継ぎが決定したので、これより新体制下の決起を趣旨とした、全体集会を開催します!」

土佐原先輩の片腕的な有川OBが開会を宣言した

「では、まず前総長から、一言あいさつをいただきます…」

達美がスピーチ台に上がると、”トネ!トネ!…”の大コールが沸き起こった

ここにいるみんなは、引責辞任を承知しているのに…

私は胸が熱くなった…


...



2分にも満たない短いスピーチを終えると、再びトネコールと大きな拍手が火の玉川原を覆い尽くした

「刃根前総長、1年間、本当にお疲れ様でした!では、南玉伝統の継承セレモニーに入ります。たっつあん、よろしく…」

有川OBがそう告げると、達美はロングサイズの赤いタスキを手に、宣言した

「ここに、第4代総長へ”バトン”を伝承します!」

「では、新総長、受け取って下さい!」

有川OBの誘導で、台上に新総長の荒子が上った

更に土佐原OB代表が、3本のつなぎ合わせた赤いタスキを両手に持って台上に立った

南玉では、歴代総長の署名を記した赤いタスキに、新たに自署を入れたタスキを結び、それを後任に手渡すことで代継ぎの儀式としていた

ああ…、荒子が4本になった赤いタスキを受け取って、達美と握手を交わしてる

再び、大きな拍手が沸き起こる

私も力いっぱい拍手を送った

従来だったら総長補佐も台上に参列するんだけど…

私はこの度の引責を重く受け止めて、丁重に辞退した

それを受けて、新補佐の鷹美も台上に上ることを辞退していた

代継ぎ披露のセレモニーは完了した

そして…、私自身におけるこの1年間の総活も終えた…




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