麻衣ロード、そのイカレた軌跡➍/赤き牙への狂おしき刃
その9
夏美



4本に繋がれた赤いタスキを受け取った荒子は、それを左腕にぐるぐると巻き付けた

そして、なんとラリアットを打ち込む動作をしてから、右手でその左腕のタスキあたりをポンポンと叩いてる

川原を埋め尽くした参列者からは、どっと笑いが漏れた

そう言えば…、去年の達美は首にグルリと巻いて、マフラー状にしてたっけ

その姿といったら子熊のプーさんそのもので、この時もみな爆笑だったわ

その後、第4代総長となった荒子のスピーチが始まった


...



「この度、4代目総長の重責を仰せつかりました、合田荒子です。すぐ頭に血が上るような、未熟者ですが、皆さんのお力で、どうか職務を全うさせてください!よろしくお願いいたします…」

荒子はまるで屈伸するかのように、低く頭を下げた

それとほぼ同時に、ああ…、始まった

やってるわ、あの連中…

親衛隊が右手を上げて、”合田総長バンザイ”って…

そろそろ”監視”につかないといけないわね…

ちょうど、そこへあっこが戻ってきた

「ああ、お疲れさま、あっこ…」

「お待たせしました。大体把握できましたよ。これ、見取り図です。大まかですけど…」


...



その見取り図によると、親衛隊は会場ほぼ中央の一か所に固まってる

概ね、指示通りの配置を守っているようだ

それに対し、ドッグスは所定の陣を離れ、随時移動してるとのことだ

ただ一人、本郷だけは陣を動いていないらしい

「うーん、親衛隊以外の親荒子派の1年連中も近くに固まってるわね。よし、私たちもその周辺で張り付きましょう。ドッグスのメンバーが、荒子陣営の1年に接触する場を見逃さないで。揉め事になるようだったら、数人かかりで制止するのよ」

「了解しました。先輩んとこの子も入れて10人ちょっとなんで、今から配置につかせますよ」

「頼むわ。私もその少し後方で監視してるから」

私たちは早速、”非常配備”についた

まったく…、こんなことに神経を削がれなきゃならないなんて…

なんとか”無駄足”で終わってくれればいんだけど…





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